第284回 2月19日(土) 18:00~
「人工林の管理と鳥類多様性」 山浦 悠一氏 (北大大学院農学研究院)日本の国土の約7割は森林であり、森林の約4割は木材を生産するために造成された人工林です。本州の人工林はスギ・ヒノキの人工林が主体ですが、北海道はトドマツとカラマツの人工林が主体です。日本の人工林面積の大きさは世界第5位、森林に占める人工林の割合(4割)は世界第二位で、日本は人工林大国といえます。日本の森林の鳥類多様性を考える上で、人工林は大きな役割を担っていると考えられます。今回は、人工林の管理と鳥類の多様性について考えてみたいと思います。
第285回 3月19日(土) 18:00~
「カイツブリ –身近な水鳥の生活を探る-」 中田 達哉氏 (酪農学園大学 環境システム学部)
カイツブリは北海道では夏鳥として分布する水鳥です。しかし、実は北海道ではほとんど生態や行動に関する研究が行われておらず、謎の多い鳥といえます。浮き巣で営巣し、雛は孵化してまもなく泳ぐことができるなど、それら生活においては不思議がいっぱいです。今回は南幌町で観察したカイツブリの生息の現状を示しながら、水鳥類について話し合えたらと思います。
「野鳥お勉強会 in 帯広」大盛況に終わる!
2010年11月20日(土) / 帯広畜産大学ほか
「野鳥お勉強会 in 帯広」の開催は、講師の柳川先生、平井さんのお二人の快いお引き受けと多大なるご協力がなければ実現できなかったことをまず報告いたします。それは開催の進め方からはじまり、講演会及び懇親会の会場準備までと何から何までのお世話をお願いしての形で進められました。ここにお二人講師に対し感謝の意を表し篤くお礼を申し上げます。そんな甲斐あって、帯畜大正門前に集まった参加者は講師含めて総勢24人。当初は参加者が少ないことを懸念していましたが、札幌や江別などから駆けつけたおじさん会員をはじめ、地元の方々、それに何より学生さんが多数参加していただくという、これまでにない新しいスタイルとメンバーで行う勉強会は、まさに十勝帯広の開催にふさわしい内容で実現する運びとなりました。第一部は、“いきなりのエクスカーション(野外講義)”と大学内での室内講義、そして第二部として夜の懇親会(交流会)の構成で行われました。
以下に、開催の概要を示しますが、結果としてはこれまでにない経験が進行し、まじめで価値ある内容に終始し、充実かつ有意義に進められましたことを報告いたします。
第一部 エクスカーションと講義(講演会)
① 「帯広-広尾道を中心にモモンガやコウモリ等の保全対策」 柳川久氏(帯広畜産大学)
現代、道路を造るうえではエコロード(自然にやさしい道路整備)の発想は欠かせません。本講義では、講師の善意とご配慮によりエクスカーション(野外研修)で実際に現場を見てもらい、その後に続きのお話や保全対策に関連する補足などをいただくという2つの構成からなる贅沢なセッションで執り行われました。
エクスカーションは、帯広-広尾道にあるコウモリやエゾモモンガの横断施設を具体的に見学することが目的でした。コウモリについては、道路を横断するトンネル(カルバートボックス)では10種のコウモリが利用したこと、休息用に設置したバットボックスに予想以上に多数のコウモリがねぐら利用したこと(下には糞もみられた)、“見る・知る・触れる”の野外講義(現場)は、柳川先生の人柄も加わって楽しく繰り広げられました。なかでも、唯一カグヤコウモリがボックスで繁殖したことや、キタキツネやネズミなどの動物たちも多数利用していることなど、これらの施設工法が動物たちにおいては有用であることを思い知らされました。
また、エゾモモンガについては、道路上を滑空できる人工構造物のモモンガ横断用支柱(道路両脇に高さ16mの塔)やモモンガ用渡し棒の設置を見学し、動物と車の事故を回避できる理由や、動物の利用時の行動などについての説明を受け、その後は連続した生息地を踏査しました。 大学に戻ってからは、柳川先生がCOP10(名古屋2010.10)で発表されたスライドをもとに、中・大型哺乳類、両生類の交通事故について、「どうしたら減少させられるか、予防できるか」の具体的な例を示した保全対策等などのお話です。アニマルパスウエイ(動物の道路)を考える基本は、何より動物の生活圏を把握することであり、その中で人間と動物の共存を考えることが必要である。また、場合によっては人間のいるところには来させないという配慮も考えるべきで、どう折り合いをつけ検討し取り組んでいくかが重要である、と締めくくられました。
② 十勝平野の猛禽類3種(オオタカ、ハイタカ、ノスリ)分布状況と営巣環境 平井克亥氏(帯広畜産大学)
十勝は農耕地景観を有するが劇的に改変を受けた人為景観と捉えられる。まず、十勝の農地は現在も拡大中で食糧生産上において重要な位置にあって自然復元による保全ということは今後も困難、そして人工林や残存林は野生生物の生息場所であり木材生産の場となっている、と前置きの説明から話がスタートしました。
数年に渡る調査の結果、猛禽類の分布環境は、十勝では中部地域と南部地域ともにハイタカが多く、ノスリ、オオタカは類似する傾向を示し、営巣密度は中部よりも南部のほうで高く、巣間の距離はノスリを除くすべての同種、異種間で中部より南部で近かったとのことです。営巣環境では、営巣木はオオタカとノスリがカラマツを高い割合で利用しているのに対し、ハイタカはノスリ、オオタカとは異なっており、概してノスリ、オオタカは大径木からなる壮齢林で、ハイタカは若齢林を好む。よって、選択性の違いが農耕地景観に複数の猛禽類の共存を可能にしており、齢段階の異なる森林の選択性は森林管理によって営巣環境を保全可能であることを示唆する。人工林のサイクルとしては、若齢林、中・壮齢林を存在させ、相互に利用可能に維持させていくのがよい、とのことです。
いずれにしても、一人で数年確実に利用している猛禽類の巣をひとつひとつ探し当て、情報記録を得ることは並大抵なことではなく、猛禽類調査等を行う者としてもその苦労を実感すると同時に誠に頭の下がる思いです。猛禽類の相互関連についてはまだまだ分からないことだらけに思います。今後も関連データを維持させていくことが大変ではありますが重要な方向であることは確かなようです。これらに同調してくれる若者が一人でも多くでてきてくれることを願っています。
第二部 懇親会
エクスカーションと講義で約4時間強の勉強会。普段なかなか体験することの少ないプログラムとスケジュールはまさしく充実日というにふさわしいものとなりました。皆さん、体と頭を使ったことでいい具合にお腹もすいてきて、懇親会の料理やお酒をおいしくいただける絶好のコンディション間違いなしといったところでしょう。
会場は、帯広駅に近い街中にあってお店の雰囲気もわるくない「いろはにほへと帯広店」です。講師慰労を兼ねた懇親会には、第一部参加の7割に近い16人が集まりました。両先生はもとより学生さんが多数参加されたことが嬉しく、とりわけ若さ明るさ漂う盛り上がりを感じます。江別から来た松山さん(当会副代表)の乾杯挨拶のあと、今日の開催を振り返る話や動物の話などに花が咲き、なごやかな会話の弾む交流会となりました。多少お酒が入り馴染んだ(酔った?)ところで恒例の自己紹介のはじまりです。一般参加者は、「とても勉強になった。こういうユニークな会が帯広にもあったらいいのになぁ・・・」や、学生さんは、「こんな会があるとは知らなかった。実績もあり多くの人が関わっているのには驚いた。機会があればいろんな人の話を聞きたい!」、「札幌に行くかもしれない!」などとイキイキとしたお褒め話などをいただきました。これらの言葉は会としても何より嬉しいものであり大事にしていきたいと思いました。
今回の帯広開催が本当によかったと安堵の気持ちに浸りつつ会は閉じられました。皆さんありがとうございました。最後に、あらためて柳川先生、平井さん、大変お世話になりました。 (tom)