2018年開催目録

開催日 演 題 発表者 所 属

アライグマは他の鳥獣よりも環境適応能力が優れ、繁殖力も強いため、短期間に生息域を拡張し、農作物被害などが多く発生させてきました。近年は、人間の生活圏にも侵入し、人間生活や寺社仏閣などの被害も顕在化していますが、把握できている被害は人間に関連したもののみで、生態系への影響は、調査手法がなく把握困難といえます。アライグマと餌資源が競合する種への圧迫のみならず、水生昆虫や小鳥獣類等には深刻な影響も懸念される事態と推測されます。

私たち人が生活していく中で、自然環境に与える影響はおそらく消えることはありません。人が作り出した環境で生活する生き物は割りと多く、鳥の中にも人が作った環境で生活している種類もしくは個体がいます。今回は私のフィールド近辺で見られる鳥と人の生活のかかわりを少し紹介したいと思います。

多くの生命を宿すホタルの生息地は、安心安全な恵みを保証してくれます。江別ホタルの会はそんなホタルの舞うまちづくりを目指した活動を 30 年間行ってきました。今回はこれまでの会の歩みと環境保護の取り組みなどについて振り返ってみたいと思います。

捕獲されること自体が極めて希であったトウキョウトガリネズミ。10 年ほど前から生きて捕獲することができるようになり、その生態が徐々に解ってきました。これまで推察されてきた生態との差を比べ、野生生物へのアプローチ方法について考えてみたいと思います。

天売島では、約 100 万羽の海鳥が繁殖のためにやってきます。ウミガラス(オロロン鳥)は 50 年前には約 8000 羽生息していましたが、減少をつづけ 10 数羽までになりました。環境省ではウミガラス保護増殖事業として保全の取組をすすめ、現在では 50 羽以上のウミガラスが天売島に飛来するようになりました。また、天売島では近年ノラネコが増 加し海鳥の繁殖に影響を与えおり、関係機関が協力し天売猫方式によるノラネコ対策を進めています。他にも「海鳥を取りまく自然環境の保全」と「羽幌の地域産業の振興」の両立に向けた取組について紹介します。

現在では特に道東地方のイメージが強いタンチョウですが、昔は札幌周辺など北海道各地に生息していたといわれます。それでは、実際の古文書には昔のタンチョウについてどのような記録が残されているのでしょうか。私は、古文書に「生息する」タンチョウを研究対象としています。かつてタンチョウはどこにいたのか、人との関わりは? 江戸時代や明治時代に書かれた古い記録から、歴史に埋もれたタンチョウの歴史を探ってみましょう。

クマゲラは絶滅危惧種に指定されていますが、北海道の森林には多くのクマゲラが生息しています。ほかのキツツキのように春には太い木にみずから穴を掘ってその穴の中で子育てをします。また、夜寝る場所も木に穴をあけてそこで寝ます。さらに、主な餌であるアリなどの昆虫は倒木、枯れ木、時には生きている木に穴をあけて餌を得ます。このようにクマゲラは森林と深く結びついた鳥です。本公演会では、主にクマゲラと森林との結び付きについて紹介します。

かつて絶滅の危機にあったタンチョウ。しかし多くの人々の保護活動によって現在約1,800羽まで数が回復しました。今回は、日本野鳥の会が行うタンチョウの保護活動の取り組みについてお話し致します。

日中戦争から太平洋戦争にかけて国策により、ペットの犬・猫の供出運動が全国展開されました。目的は兵士の防寒着の毛皮材料用です。軍用犬・天然記念物などは対象外。選別基準は戦争に役立つか否かです。最も熱心だった北海道では、町内会通じて各家の犬猫頭数が調査され、割り当てを決定し実施されました。尾岱沼では白鳥も犠牲となりましたが、「白鳥の碑」はなぜ建立されたのでしょうか。知られざる事実も紹介します。良心をマヒさせる異常行為はどのようにして行われたのか。その全体主義を問います。なお、この研究論文は 2017 年度ABU受賞の原作となりました。

「幸せの国ブータン」の観光は独特な民族風習や文化が中心ですが、近年“自然”が注目を浴びています。地形は“北 高南低”、北は7000m級のヒマラヤ山脈、南は200m台の亜熱帯ジャングル。まるで急坂のようなものスゴイ高低差の国。その環境の植物相は60%が固有種と云われ、今でも新種が次々発見。バードウォッチングも盛んで春は海外のバーダーで賑わいます。そんな知られざるブータンの自然を、花々や野鳥を中心に紹介します。

377 11.17 野外活動者のためのスマホアプリ活用術 幌村幸司 北海道空知総合振興局保健環境部